2018/05/19 18:25

「おはしょりってなに?」

和服に馴染みがない人でも見たことはあるはず。

浴衣や着物を着たときに帯の下に出る「折り返し」の部分です。

「着付けは覚えたんだけどおはしょりが面倒なのよね」

という声は多いです。

 

最近テレビなどで特集される機会も増えているので、「おはしょり」が要らない浴衣や着物を目にした方も多いと思います。

 4月30日のスッキリでも中目黒のお着物屋さんKAPUKIさん(http://kapuki.jp/ )の「おはしょりが要らない着物」や「簡単に締められる帯ベルト」が取り上げられていました。

 

とはいえ、

「・・・でも「おはしょり』がないと正しい着方じゃないんでしょ?知らない人にまちがってるって言われるのも嫌だし。」

という言葉も耳にします。

 

 

現代の女性は「おはしょり」を作って着ている人が多いのに対して、男性は「おはしょり」がない「対丈(ついたけ)=身長に合わせた丈の和服を折り返さずにそのまま着る」という着方が主流です。

 

実は女性も江戸時代前期までは「おはしょり」を作らない「対丈」の着こなしが主流でした。

江戸時代前期の女性の絵画「湯女図」には、おはしょりを作らずに対丈で着ている様子がはっきりと描かれています。

( http://www.moaart.or.jp/?collections=065 )

 

ところが江戸時代中期、上流階級の女性の着こなしが庶民に流行します。

(「お引き摺り(おひきずり)」で検索してみてください)

 

上流階級の女性たちは布をふんだんに使って誂えた長い着物を、室内では裾を引きずって優雅に過ごしていました。

たまに外に出るときは歩きやすいように「裾からげ」と言って裾をたくし上げているおはしょりの様子が、

「うわ〜セレブ!!」

と庶民に憧れられたわけです。

「端を折る=はしおり」から「おはしょり」と呼ばれました。

 

当時の長い裾は現代の長いネイルアートに近いものがあるかもしれません。

「掃除や炊事を自分でやらなくていいような暮らし」の象徴です。

 

そのような理由で庶民に流行った「おはしょり」ですが、今と違って布が貴重だったので、長い丈で作った着物は身長差があっても親から子供へ譲って着ることができました。

子育てや仕事も全て着物を着ていた当時、長めの着物で「おはしょり」があることで着崩れが直しやすかった、という利便性もあったと言います。

 

庶民の服装が洋装に移りゆき和装の人が激減した結果、着物が日常だった時代の最後に流行った「おはしょり」を「正しい着方」として教える着付け教室ができました。

女子高生の制服文化がなくなったとして、150年後の「制服着付け教室」で「正しいルーズソックスのたるませ方」を教えているようなものです。

 

 

こちらはいち字きまりの「オールブラックのかんたん着物」にコルセットベルト、MIKI SAKURAさん( https://mikisakura.fashionstore.jp/ )のふわふわ作り帯を合わせたコーディネート。

対丈なので着付けの時間も短縮、ワンピースを着るようにかんたんに着ることができます。

流行りのコルセットベルトに作り帯で、帯を締めるのもあっという間!

対丈の着こなしのコツは着物作家のCHOKOさん:http://blog.livedoor.jp/chokonyan/archives/51412180.html

着物フォトスタイリストのmasterminminさん:https://ameblo.jp/masterminmin/entry-12243832822.html

のブログなども参考にしてみてくださいね。

 

 

貴重な着物を家族代々で受け継いで大切に着ていく着方も大切な文化です。

正装では私もおはしょりを作って着ます。ハレとケは別、という思いがあるからです。

しかし普段着を「いつか娘にも・・・」と考えて洋服を選んだことはありません。

それよりも「着回しがきく」「好きな色」「トレンド感のある柄」など、自分の好みを優先しているのは私だけではないでしょう。

着物も同じでいいのです。

 

誰かのものさしに合わせた着こなしではなく「自分のため」の着物選び、はじめてみませんか?